不妊・不育の
検査と治療

DIAGNOSIS & OPTIONS

不妊症や不育症にはさまざまな原因があり、適切な検査と治療を行うことで、妊娠への可能性が高まります。
このページでは、それぞれの状態に応じた主な検査や治療法について、具体的にご紹介します。どのような選択肢があるのかを知ることで、今後のステップを考える際の参考になれば幸いです。

不妊・不育の検査と治療不妊・不育の検査と治療
不妊治療について不妊治療について
1.一般不妊治療

タイミング法
超音波検査や尿検査により、排卵の時期をより正確に予測し、妊娠しやすいタイミングで夫婦生活をもつ方法です。自然な妊娠を目指した最初のステップとなります。
内服の排卵誘発剤を使用して卵胞を育てていくことがあります。

人工授精(AIH)
タイミング法同様、排卵時期を正確に予測し、同日にパートナーに精液を採取していただきます。精液を調整して、状態の良い精子を回収・濃縮し、細いカテーテルで子宮内に調整液を注入する方法です。精子の卵子への到達をサポートし、より自然に近い妊娠を目指します。
内服や注射の排卵誘発剤を併用することで妊娠率の上昇が見込めます。
年齢にもよりますが、妊娠率は5〜10%程度です。

2.生殖補助医療(ART)
体外受精/顕微授精(IVF/ICSI)
FSHやHMGとよばれる注射の排卵誘発剤を使用して、複数の卵胞を育てます。卵胞が十分に育ったら、HCGまたはGnRHアゴニストと呼ばれる排卵を促すお薬を使用して、その36-38時間後に採卵手術を行います。
採卵手術は主に経腟超音波で確認しながら、経腟的に細い針を使用して卵胞を刺して吸引することで、その中にある卵子を採取します。この際には、局所麻酔や静脈麻酔を使用して、極力痛みを感じないように工夫します。
受精の方法には、培養液中で卵子に精子をふりかけて受精させる体外受精と、精子を1つ選んで卵子の細胞質内に直接注入する顕微授精があります。精子のコンディションが十分でない場合には顕微授精を実施することで、より受精率が高まります。
得られた受精卵は培養器の中で5-6日ほど培養します。1-3日目までの培養を初期胚培養、4日目以降の培養を胚盤胞培養といいます。
新鮮胚移植
体外受精/顕微授精で得られた受精卵(胚)をその周期に子宮に戻す治療です。
当院の胚移植は基本的には胚盤胞まで発育した後に行います。
採卵後の子宮のコンディションや副作用・全身状態を十分に考慮して、一旦状態の良い受精卵を凍結し、胚移植しない(全胚凍結)ことがあります。

多数の卵胞が育ってきた場合、その周期で妊娠すると卵巣過剰刺激症候群(OHSS)という副作用が重症化することがあり、長期の入院が必要になることがあります。全胚凍結することでこのリスクを十分に低下させることが可能です。

胚凍結
良好な受精卵を液体窒素タンク内に凍結保存する方法です。
将来の妊娠のために移植タイミングを調整できます。
融解胚移植(排卵周期/ホルモン補充周期)
凍結保存した胚を解凍して移植する治療です。自然排卵を活かす方法と、ホルモン剤で子宮内膜を整える方法があります。通院がある程度可能な方は排卵周期での胚移植を推奨しています。
お仕事やご家庭の都合、または遠方から来院される方にはホルモン剤を使用した子宮の調整方法が便利です。
3.その他の追加検査・治療
タイムラプス培養
胚の成長を24時間観察できる特殊な培養器で、より発育良好な胚を選ぶことができます。胚へのストレスも軽減されます。

保険診療外となります。

PICSI(ヒアルロン酸結合精子選別法)
成熟度の高い精子を選び出す方法で、質の高い精子を選別して授精に用いることができます。受精率や胚の質の向上、流産率の低下が期待されます。

保険診療外となります。

膜構造を利用した精子選別術
精子の形態や運動性を考慮した特殊な精子選別機材を使用し、より良質な精子だけを選別する方法です。受精卵の質の向上、妊娠率の向上、流産率の低下が期待されています。

保険診療外となります。

子宮鏡検査
子宮内に細い内視鏡を入れて、ポリープや癒着、形の異常、炎症などを直接観察します。着床障害の原因を特定する重要な検査です。

ER-Peak(子宮内膜着床能検査)
子宮内膜が着床に最も適した時期(着床の窓)を調べる検査です。胚移植の最適なタイミングを知ることができます。

保険診療外となります。

子宮内細菌叢検査(子宮内フローラ検査)
子宮内の善玉菌・悪玉菌のバランスを調べます。細菌環境の乱れは着床不全に関与することがあり、抗菌薬やプロバイオティクスで調整します。

保険診療外となります。

CD138抗原検査(慢性子宮内炎検査)
子宮内の組織を採取して慢性的な炎症があるかどうかを顕微鏡で調べる検査です。慢性的な子宮内膜炎は着床の妨げになることがあります。

保険診療外となります。

Th1/Th2比検査
免疫バランスを確認する検査です。ヘルパーT細胞(Th1)が優位だと胚の着床に悪影響を及ぼす可能性があり、免疫調整療法が有効となることもあります。

保険診療外となります。

タクロリムス療法
免疫の過剰な働きを抑える薬を用いた治療です。Th1が優位となることで着床障害が予測される場合にTh1の働きを抑える目的で使われます。

保険診療外となります。

不育症について不育症について

妊娠しても流産を2回以上してしまった場合、不育症が疑われます。
次の妊娠に備えて以下のような検査および治療をお勧めしています。

抗リン脂質抗体症候群の検査
免疫の異常により血栓ができやすくなり、流産を引き起こすことがあります。血液検査で抗体の有無を確認します。血栓の形成を予防するお薬を使用することで妊娠を維持しやすくなります。

血液凝固因子検査
血液が過剰に固まりやすい体質かを調べる検査です。凝固異常は胎盤形成を妨げ、不育症の原因となることがあります。血栓の形成を予防するお薬を使用することで妊娠を維持しやすくなります。

甲状腺機能検査
甲状腺ホルモンの異常は妊娠維持に影響します。特に自己免疫性甲状腺疾患は不育症と関係が深いため、早期発見が重要です。必要に応じてホルモンの補充を行います。

子宮鏡検査
子宮内に細い内視鏡を入れて、ポリープや癒着、形の異常などを直接観察します。子宮の形態異常や癒着、炎症などを調べ、着床・妊娠維持に関わる問題を明らかにします。手術療法や抗生剤治療などが有効な場合があります。

流産絨毛染色体検査
流産時に胎児側の染色体異常が原因かどうかを調べます。次回妊娠の対策を考える上で重要な情報となります。

夫婦染色体検査
ご夫婦どちらかに染色体の構造的な異常があると、流産のリスクが高まることがあります。結果によっては遺伝カウンセリング外来へ紹介させていただくことがあります。

保険診療外となります。

NK細胞活性検査
体内の免疫細胞(NK細胞)が胚を攻撃してしまうリスクがあるかを調べます。過剰な免疫反応を抑える治療と組み合わせることがあります。脂肪乳剤(イントラリピッド)を点滴することで免疫の異常反応を和らげ、胚の着床を助ける治療法です。反復着床不全の方に用いられることがあります。

保険診療外となります。

ネオセルフ抗体検査
近年注目されている新しい検査です。自己免疫異常の一種で、抗リン脂質抗体症候群同様、この抗体が存在すると、血栓症を起こしやすく、胎盤の循環不全により流産や妊娠中のトラブルの原因となる可能性が示唆されています。血栓の形成を予防するお薬を使用することで妊娠を維持しやすくなります。

保険診療外となります。

各種料金については、「治療費」のページをご参照ください。

治療費
不妊症と不妊治療に関する基礎的な内容はこちら
不妊症と不妊治療について